トーラスのde Rham cohomology(part1)
こんにちは。今日からトーラスのde Rhamコホモロジーの話をしようと思います。内容としては,(1)de Rham コホモロジーを導入し次に、(2)Fourie級数を復習、最後に(3)2次元トーラスのde Rham コホモロジーを計算という流れとなります。part1では(1),(2)を扱っていきます.
1.de Rham cohomology群
を可微分多様体とします.
を非負整数とし,上の滑らかな値-formのなす線形空間をで表します.外微分
は を満たしているのでは複体になります.
これのk次コホモロジー群
をの群といい
で表します.de Rham cohomology群を素直に計算するには,微分方程式を解けば良いことになります.
例えば,の0次de Rhamコホモロジーならば、次のように計算できます.は微分方程式と同値で、その解空間は積分定数だけの自由度分あるからと同型.と併せればとなります.さらに1次のde Rham cohomology群について,であることがわかります.微分積分学の基本定理から,がわかりますから,が言えるのです.
次に(円周)の場合を考えてみましょう.で,特に1次元トーラスとなっています.そのde Rhamコホモロジーを求めるのですから,トーラス上の微分方程式を解くことになります.それがFourie級数を導入するモチベーションとなります.
2.Fourie級数
トーラス上の関数を表示するツールとしてしばしば使われるのがFourie級数です.
上の滑らかな値関数に対する級数を次で定める:
ここで係数というもので
で与えられるものです.
定理:
上の滑らかな値関数,およびに対して
(1)
が成り立つ.
(2)対応,は
上の滑らかな値関数全体のなす線形空間と
との間の同型を導く.
上の主張は言い換えると次のようになります:
上の微分作用素はFourie変換を通してみると
上の対角行列
に対応する.
業界用語(?)で「Fourie変換で,微分が掛け算に変わる」ってやつです.それでは次回,上の主張を使って1次元トーラスのde Rham cohomology群を計算してみましょう.
同型に注意しましょう.Fourie変換によって次の可換図式が得られます.
上の可換図式において,垂直方向は同型ですから,
となります.
これも可換図式から
となります.
1次元トーラスのde Rham cohomologyが以上のようにFourie級数を使ってできました.次回は2次元トーラスの場合を実行します(続く).