線形代数のトレースの話をする。
みなさんこんにちは。きょうは、いつにもましてゆるふわな話です。線形代数で出てくる、トレースを基底を取らずに定義してみるのが目標です。
まずは、よくみる定義から。
(定義一)
を体とし、を上の次元ベクトル空間とする。このとき線形写像のトレースとは、
の、ある基底に関する行列表示の対角成分の和のこととする。
長いですね。なお、行列のトレースは既知としました。行列のトレースについて,次の性質は重要です。
が次正方行列ならば、
これをつかえば、先ほどの線形写像のトレースが
well -definedなことが次のようにわかります。
基底の取り方を変えた場合,の行列表示は,と変わるが,そのとき
で、基底の取り方によらない。
っていうのが,オードソックスなやり方なのですが,基底取りたくない時は次のようにしましょう。
(定義二)
つぎの同型に注意する:
最初の変形は、の有限次元性を使っていて、2度目の変形はテンソル積との随伴です。尚,はの双対の略記です。いまこしらえた同型による,
の像でもってトレース
とする。
定義二では、トレースそのものを基底を取らずに定義しています。これがいつものトレースと一致することを見るには,の変形を基底をとってやれば良いのです。
基底を取りたくない時は,ぜひ定義二を使ってみてください。